反骨と異端

アウトローは文化だ

池内恵『レイムダックになってから輝いたオバマ』を読んで

「それでも来ないよりはましじゃないか」と被爆3世の私は思った。

被爆2世の父もオバマさんを一目見に行きたがっていたが、広島戦後初の超厳戒態勢の中で諦めたような感じだった。

 

原爆投下されてから71年間、はじめてアメリカの大統領がやってきた。

71年間 待っていて、オバマさんが広島にいたのは50分程度だった。

それでも当初は5分の予定だったスピーチは17分に延長されていた。

ヒラリーや、夫のビルにも絶対に来てほしいと多くの広島人が思っている。

 

被爆者は感無量だ。

それでいいじゃないか。

 

聡明なオバマさんは今回のスピーチで最初にこういった。

「なぜ私たちはここ 広島に来たのでしょうか?」

 

なぜオバマさんはやってきたのだろう?

“偽善だ、売名だ、政治目的だ”という批判は正しい。

政治目的上等だ。

どういう理由でもいいから、なぜ71年間も広島には米国大統領だけはやってこなかったのだ?

 

米国内には原爆投下を肯定する右翼老人も多いから、オバマさんは今後、悪口を言われるかもしれない。今回政治家としてのリスクをとって広島訪問している。勇気があると言ってもよい。過去の米国大統領はそのリスクにビビッて誰一人として広島に来たことが無い。

 

平和公園一帯は年中無休だ。世界中から首脳クラスがやってくるから、施設の休日を設けていないのだが、米国大統領だけは、被爆者の数万の呼びかけにも関わらず、これまで一人もやってこなかった。戦後、ほとんどの国の首相やトップクラスは広島を公式に訪れている。

広島人は、ずっと米国大統領に広島に来てほしかったのだ。71年間待っていた。

 

 

被爆者にとって、71年目に米国の現役大統領が本当にやってきたことは非常に大きい。

池内氏のように器用に冷静に利害関係だけで言葉で表現しきれない。

広島に愛着のない人だから、今回の訪問でオバマが市民に残していったものを共有することができないで、利害関係だけでスパスパ語れるんだ。

この71年間はとても長かったのだ。

テレビで見たけど、被爆者の集まる老人ホームでは、お年寄りが何人も涙を流していた。

広島人はみんな今回のオバマの決定にびっくりして、警察ですら「マジかよ?!」と叫んだ。

お年寄りはこの71年間にあった苦しかったこと、楽しかったこと、幸福だった記憶…を思い出して泣いていた。

大勢の人が過去を共有していた。

大勢の広島人は“謝罪してほしい”なんて思っていない。