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反骨と異端

やどかりアウトロー編

【ヤクザ本①】お父さんの石けん箱 (田岡由伎/ちくま文庫)

私が読んだヤクザ本 山口組分裂セカンドシーズン

山口組三代目の田岡親分の実の娘さんが父親との思い出について語った1冊。

自分の家族のことは悪く書きたくないので、そういう親族の愛情をさっぴいて読むべき本なのだろうけど、面白いので一気に読んでしまった。

 

魅力ある人間の、その魅力には3ランクあるということが中国の故事にある。3ランクの三番目、ナンバー・スリーは頭脳明晰。ナンバー・ツーは豪放磊落。そしてナンバー・ワンが深い湖の前にたたずんだように、ただわけもわからずに引きずりこまれるようなタイプという。私が見たいろいろな人の中で、頭脳明晰の方もいるし、豪放磊落のタイプも多い。しかしナンバー・ワンの湖のタイプは、お父さん以外にはどうも見当らない。グーッとなぜかわからないけど、心を開かされてしまうような、思っていることを知らぬ間にしゃべらされてしまうみたいな…。

『お父さんの石けん箱』 (田岡由伎/ちくま文庫) 249ページ

  

細かいエピソードを読んでみると、“これ事実なのかな~?”と思う個所もなきにしもあらずなのだが、自分の父親のことは誰しも美化せずにはいられないだろうし、心理カウンセラーの著者の文章は歯切れがよく面白い。

大筋ではやはり田岡三代目ってこういう人だったのかなと思う。極道の中の極道ではありますが、入れ墨もなくきれいな身体に、断指も無し(子分が指を詰めるのは批判的だったらしい)

 

いつだったか、病院のベッドに寝ながら、お父さんがお母さんに聞いた。

「おまえ、もしもの時に、1千万円くらい用意できるかぁ」

私もそこにいた。別に、今必要があって聞いているという感じではなかった。

「何言うてますの、お父ちゃん。心配せんでもな、1本や2本、私はいつでもなんとか用意できるようにしておきますから」

とたんにお父さん、ガバッと起きて、

「エッ、おまえそんなに金持ちなん?」…本当に驚いていた。家にお金がいくらあるか

何がどれだけあるか、そういう部分は、お父さんは全然知らなかった。(同180ページ)

  

最近でも織田さん@神戸山口組が「田岡三代目のころの原点に戻らなきゃいけない」とか語っているのをムックで見たが(その後で「サインください」事件が起こっていたような…)とっくに死んでしまった三代目がなぜにあれだけ人気があるのか?!その理由がなんとなく分かる本である。「山健組」(いまの神戸山口組)の開祖、山本健一さんも登場。

古きよき時代、「暴力団」という言葉も、「反社会的勢力」という言葉も無かったころ、暴対法も排除条例も無かったころの話。 

 

お父さんの石けん箱 (ちくま文庫)

お父さんの石けん箱 (ちくま文庫)