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反骨と異端

やどかりアウトロー編

【ヤクザ本2】ヤクザライフ(上野友行/双葉社/2016)

私が読んだヤクザ本 少数派について語るときに我々の語ること

「異様に面白い」という口コミにつられて買って読んでみた。

 

ヤクザライフ

ヤクザライフ

 

 

ただいまAmazonサブカルチャーカテゴリ1位ぶっちぎりの“話題の書”らしい。

最初コミックスだとばかり思っていたが、届いてみたら436ページを超える書籍である。表紙だけ真鍋先生でイラストも写真も無し。でも面白さにページをめくり続けて一気に読める。400ページ超える単行本だし、ヤクザライフというタイトル言い得て妙だが、任侠精神の「に」の字も感じられないコミカルドキュメントである。

登場するのは若い衆から組長までありとあらゆる年代の筋の人。

現代版ヤクザを理解したいと考える人たちには詳細かつ貴重な資料足りうる“研究書”でもある。

刺激的か?と聞かれれば、刺激が強すぎて、この手のアウトロー本を読みなれない向きには目の前がくらくらしたり、胸が悪くなったりするんじゃないですか。

 

「ちなみに昨日の話なんですけどね、どこかの雑誌に書きます?」

「組長から聞いた話は書かせてもらいますけど、昨日あったことについては書きませんよ。嫌でしょう、皆さんも書かれると」

「いや、それが、親父(組長)はどこかに書いて欲しい、っぽいんですよ。今日になって、『ライターさんの前で年甲斐もねぇとこ見せちまったなぁ。恥ずかしいなぁ、書かれると』 って念仏のように繰り返してまして。つまり、書いてくれってことでしょ。自分で言うのが恥ずかしいから、俺の前で繰り返すんですよ」

…これなのである。

言うまでもなく、現在ヤクザ業界ではどこの組織もメディアへの露出を認めない風潮だ。ところが、当のヤクザたちはこれまで親に逆らい、教師に歯向かい、先輩もぶっ飛ばしてきたような人間である。つまり、「やるな」と言われると意地でもやりたくなってしまう困った性分で、「話だけでも聞いてくれ」「刺青だけでもいいから載せられないか」という者が絶えないのだから、どうにか私もメシが食える訳だ。(20p)

  

本書は特定の組のスクープとか現状分析とか、個人名を出して書かれる“武勇伝”ではないです。かといっていわゆる“実話系”にありがちな任侠団体美化も一切無し。

日頃からヤクザに顔が広いというか、接触を繰り返して、そこから得られた“生の情報”をややコミカルに、つきはなした文体で編集、加工してある匠の芸という感じの本である。読者としてはどこの組の誰の話か?情報の出どころが気になるので、本の最期にでもSpecial Thanks to で全員の名前と所属をリストにして出しておけばよかったんじゃないか。

 

「なんでヤクザやってるんですか?」と。

だが、私はいつの頃からか彼らにこの質問を投げかけるのをやめた。返ってくるのは「もはや意地ですよ」「今の親方に惚れているだけなので、親方が辞めたら俺も辞めます」「〇億円貯めたら辞めようと思ってます」といった答えに大別されていて、あまり珍しいものがない。

(略)

「まわりにもよく言われますけど、俺は意外と辞めようと思ったこともなくて、それがなんでなのか自分でも分からなかったんですけど、この前(留置場で)たっぷり時間があったから嫌でも考えますよね。知ってると思いますけど、俺、仕事だけは真面目じゃないですか」

「よく徹夜されてますよね。朝まで飲んでも、家に帰らないで、会社に向かわれてますし」

「そうでしょ。まぁ、それは俺の性格というか、スポーツでもゲームでもとことん追求しなきゃ気が済まなかった訳です。昔から。けどね、俺、留置場でずっと犯人のことが頭から離れなかったんですよ。それこそ、どう追い詰めて、どういたぶって、最後は家族までこうしてやろうとかね。そういうことを延々と考えて。すると、想像しただけでめちゃくちゃ興奮するんですよ。それこそ、鳥肌が立つほどに。これは、カタギの普通の仕事じゃ、絶対考えられない感覚なんですよ」(172p)

 

こういう本が売れる、読まれるという事実が、ヤクザの存在意義というか、めちゃくちゃなアウトロー(の列伝)をカタギの方が求めているということなのか。