反骨と異端

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山口組概論―最強組織はなぜ成立したのか (猪野健治/ちくま新書)

山口組概論―最強組織はなぜ成立したのか (ちくま新書)

 猪野健治さんの本を読むのは好きで、『ヤクザと日本人』も格調が高くてよかったけど、こちらも面白かったです。

初版が2008年ですから、三代目時代の考察とか著述が異様に長く、六代目に関する記述は全体的に短めです。そいえば司六代目が社会不在だった時に読んでいたという「読書リスト」が話題になっていましたが、その中に本書は入ってました(申請して却下された本)。

猪野健治さんは時代とヤクザ組織の変化を冷徹・公平なまなざしで見つめて書かなければいけないことだけを書く…という堅いスタンスがかっこいいと思います。

でもヤクザは撲滅しなければいけないと考えているわけでもなさそうで、社会の構造が悪いのだから、マフィア化よりは現状のほうがいいのではないかという本音もありそうです。

『ヤクザと日本人』の前半などは、“よくこれだけ調べたなあ”と感嘆してしまうくらい、過去五〇〇年さかのぼって、日本史の細かいところを細かく掘り返してあります。

ふーん、日本史ってこうだったのかと“書かれざる部分”にスポットライトを当てたことには意味が大きいでしょう。猪野さんは日本史でも、中世の異形研究とか、ああいうジャンルが似合いそうです。

山口組概論』は本の最後の“参考文献”のところに「溝口敦」本が3冊くらい書いてあることからも、比較的新しい資料を用いてまとめた感があります。

私自身は、フロント企業の発祥とか、経済ヤクザといった言葉を知ってはいたのですが、この本を読んではじめてその由来とか意味が分かった言葉もたくさんあります。

猪野健治さんは文章がうまいし、バランス感覚に鋭く、公平なので、安心しておすすめできる1冊です。

 

本書とは関係ないけど、ヤクザ本って寝る前に読むと、気持ちが落ち着いてぐっすり眠れるのは私だけですかね。

山口組10大ニュース 2016年」とか誰か作らないかな。