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薬物とセックス (溝口敦/新潮新書)

薬物とセックス (新潮新書)

読了したのでメモ。Amazonレビューにもあるが、“よくまとまっている”本という印象。基本書として最初に読むと日本における薬物の蔓延という問題がわかりやすくていいです。

薬物について何も知らない人でも、“薬物の何がそんなに怖いのか”という点についてくどく解説してある。類書は数多いが、新しい知見も多く読み応えある。

しかし溝口氏に薬物使用経験が無いのでそのあたり突っ込んで表現するのに無理があり、「伝聞」とか「引用」ばかりの本…というネガティブなレビューもある。(どうせなら面白い本にするためにキメセク1回やってみればよかったんじゃないですか。)

“この薬を使用すると、数十分後に瞳孔が開いて、周りはいい人ばかりになったような気がして…”というくだりを読んでも、

なぜ自分の瞳孔が開いたとわかるのか、瞳孔が開いたらどういう感じになるのか、世界がキラキラして見えるってどういう風に世界が見えるのか、経験者じゃないと分からない世界の記述が延々と数十ページ続く。

でも本書に限定していえば、むずい薬物の分類も、ネットの裏サイトも、よくよく調べあげて、まとまっているので、同じ仕事を別の人がやったとしても、1冊2~3時間で一気に読み切れる、こんなおもろい本にはならなかっただろう。

溝口さんはきっと高校生~大学生だったころは、読書感想文とか、専門書を読んでまとめを書いてくる宿題とかで困ったことがなかった人なのだろう。

薬物に関する大量の資料を持ってきて、読んでためになる個所、面白いところを1冊の本にまとめあげる力量は相当に高い。

本書の冒頭あたりに、“なぜ薬物が原因で逮捕される時はカップルで逮捕されるのか?という問い”について若い人たちが無知だから薬物による逮捕や身を持ち崩す人がこれほど多いのだろう(だからこの俺が本を書いてやったぜ)というような著者の解説があるが、老婆心というか、だから薬物にはさわらないようにしましょうね…という一種の啓蒙書になっている感。覚醒剤にさわっている奴、さわりそうな奴がおつむてんてんなのを理解して、“これ以上、薬物に関して、易しく、書けない”というところまで、易しく書いてあるわりには迫力がある。

女性は薬物によって得られる快感が増大するのは想像できるが、男性の方が(犯罪であることを知りながら)“キメセク”に走って逮捕されて人生を台無しにする、そこまで薬物に「はまる」理由がよく分からない…と溝口氏。

男性の場合は、出す前後の数十秒しか、身体的な快楽がないので、その快楽が7倍に拡大したとしても、それは社会的な存在としての自分をフイにしてしまうほどのことではなかろう…と素朴な疑問を呈してある。