反骨と異端

アウトローは文化だ

世間の想像では「日本一のいれずみ男」になるのかな。

 

私の知っているお父さんは、平和主義者だった。「ベラミ」で撃たれて、報復がどうのこうの言う時も、「やめとけ、と言うて済むもんやったらなあ」と、苦慮していた。世間のいわゆるヤクザのイメージからずいぶん遠い人だったと思う。

いわゆる“指を詰める”ことなど大嫌いで、反対だと言っていた。「指を詰めるぐらいなら、自分のそばにきて、すみませんでしたと真剣に頭下げるほうがずっといい」と。

(略)

イレズミについても嘆いていた。お父さん自身はイレズミをしていない。世間の想像では「日本一のいれずみ男」になるのかな。昔は考えたこともあったらしいが、当時はお金がなかった。お金ができた時には「身体にスミ入れるより深い色が自分についとったんや」と言う。

そして若い衆さんにも、入れることに賛成しない。またイレズミをしている若い衆さんたちには「人に見せるな」とやかましく言い、手首まで入れている人には、夏でも長袖のシャツを着させていた。「きれいな身体でいたほうが、やりなおしもきく」心に“ヤクザの色”が入ったらやりなおせないということなのか。~田岡 由伎『お父さんの石けん箱』 
お父さんの石けん箱 (ちくま文庫)

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